クリエイティブノート

ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションをはじめ、
優れたクリエイティブな世界をお届けいたします。
あなたの身近なところに歴史的にも優れたデザインやアートがきっとあるはずです。



ALESSI社  ステファノ・ジョヴァンノーニ (イタリア)

(1954年-現在)

アレッシィ社は、1921年イタリアのオメーニャ市に創設されました。高品質で機能的なステンレス製キッチンウェアで名声を博した後、1955年から、様々なデザイナーとのコラボレーションを開始しました。その内の一人が、今回のデザイナー、ステファノ・ジョバンノーニです。彼は、アレッシィの他にもイタリア・カッシーナやフロス、フィアット社のデザインを手掛ける爆発的な才能を持つデザイナーです。

ジョバンノーニの作品は、独創的で、夢いっぱいのフォルムで世界を魅了しています。数あるアイテムの中でも、この「マジックバニー」は誰しも目にした事のある、彼の代表作といえるでしょう。アッレッシィ=「うさぎのつまようじ入れ」と思い浮かべる方も少なくないと思います。

この「マジックバニー」は、シルクハットの中から、うさぎが顔をのぞかせているかわいいデザイン。耳を持ち上げると、中に隠れている楊枝やピックが放射上に飛び出す仕組みです。かわいいだけでなく、いつもは楊枝が中に収納されているため、衛生面でも安心できます。

小さなアイテムも、インテリアの重要なポイントです。日々使うキッチンウェアにも、おしゃれを見つけてみてください。

ポール・ヘニングセン(デンマーク)

(1894年9月9日 - 1967年1月31日)

ヘニングセンは、伝統的な機能主義建築をキャリアのスタートとした後、照明分野に興味を移していきました。活動領域は文筆活動にも広がり、ジャーナリスト、作家としても活躍しています。

 1925年にルイスポールセン社とのコラボレーションは始まり、1967年に亡くなるまで続きました。彼がパイオニアとして切り開いてきた照明分野の業績 「影と光、グレア(不快な眩しさ)、光による色の再現、そしてそれら光の特性を人間の福利に結びつくように利用すること 」 は、いまもルイスポールセン社が実践するライティング・セオリーの基礎となっています。

 PH5は内部のリフレクター(反射板)とシェード(かさ)を精巧に組み合わせることで、直接光源が見えない反射光のみによる光を実現しています。さらに、内部のリフレクターに施された赤と青の塗装によって光の色を補正し、温かみと爽やかさを同時に表現する理想的な光を生み出します。

 この照明器具は、とてもニュートラルで美しいあかりを放ちます。昼間の照明をつけない時間でも、独特のフォルムが、やわらかい影を落します。

 あかりの色合い、明るさ、やわらかさは、人の心に大きな影響を与えます。毎日やってくる夜の闇を、美しいあかりで照らし、豊かさと安心感を与えてくれる、そんな照明器具です。




アルネ・ヤコブセン(デンマーク)

(1902年2月11日 - 1971年3月24日)

建築家、そして椅子・家具のデザイナーとして有名なヤコブセンデザインのキッチン用品、ステルトン社の「シリンダー・ライン」の紹介です。「シリンダー」とは、円筒のことですね。

このシリーズは、ヤコブセンが義理の息子ペーター・ホルムブラッドに依頼され、あるパーティの席でナプキンに3つの円筒をスケッチしたものが原型となり、3年かかって製品化されました。
高度な技術と機能性を兼ね備えたこのシリーズは、ステンレスの美しさを最大限に引き出した、時代が求める作品ともいえるでしょう。

シンプルさを追求した円筒のフォルム、キッチン用品として当たり前だけど、優れた素材のステンレス。日々の生活で使うものだからこそ、美しく使いやすいものを選択したいという思いを感じられます。

ステルトン社の多くの製品は、ニューヨークの近代美術館、クーパー・ヒューイット美術館、フィラデルフィア美術館、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館、ミュンヘン国立工芸博物館、コペンハーゲンの装飾工芸博物館に収納されています。

ミハエル・トーネット(ドイツ)

(1796年7月2日 - 1871年3月3日)

みなさん、この椅子を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
日常当たり前に見ているものにも、技術とデザインが生まれる瞬間があり、世界を驚かせた歴史があります。

この椅子の生みの親・ミハエル・トーネットは、発明家・企業家の両方において家具を量産するという近代システムの基盤をつくった先駆者です。

当時のドイツやオーストリアでは、「ビーダー・マイヤー」と呼ばれるカーブを描いたシンプルで実用的な家具が好まれていました。
そんな最中、無垢の木材から曲線や曲面を削り出し、その上に薄い突板を貼るという従来の製法は、あまりにも原始的で、非効率的なものでした。

そこでトーネットは、膠(にかわ)をとかした湯で薄板を煮て柔らかくし、曲げ型に挟み込み、曲げ加工をし乾燥させるという技術を編み出しました。
さらに、ノックダウン(分解)方式で出荷されるため、効率的な大量輸送が可能でした。

「軽く丈夫で美しい、座り心地もよく安価である」椅子を完成させたトーネット社は、作る側と使う側の希望を形にしたことで、世界中に広がり、19世紀に約5,000脚を売上げました。

在るものを見直し、新しい技術とデザインで時代の流れをつかんだトーネット。
シャープ・シンプル嗜好と合わせて、天然素材や自然素材が見直される今、後世に残るデザインはどんなものか考えてみてはいかがでしょうか。


クリエイター 千利休

(1522年・大永2年~1591年・天生19年)

皆さん良くご存知の千利休(せんのりきゅう)は、安土桃山時代の茶人。
何も削るものがないところまで無駄を省いて、緊張感を作り出すという侘び茶(草庵の茶)の完成者として知られています。

利休は、今の職業で言えば、アートディレクターでありクリエイターであったと言えます。
当時、“絢爛・華美を良し”とする時代に“無きが事を良し”と、それらのコンセプトを視覚化し体験できるよう、空間や道具を新たな視点で創造しました。

お百姓が使っていた、欠けた飯茶碗を「雅味」のあるものとし、茶の湯の道具として用いるなど、ブレイクスルーな発想で
様々な「こと」と「もの」を生み出しました。

今は情報が錯乱して、何が自分にとって“真に必要”なのか?分らない情報社会です。
様々な情報を選別し正しい選択をする為にも通常の概念や風潮を完全にリセットし、素の状態で、ものを“見たり”感じたり“出来る精神環境を自ら作りだす必要があるでしょう。

利休の心髄とされたの藤原家隆の歌
「花をのみ まつらん人に やまざとの ゆきまの草の 春をみせばや」

ジャクソン・ポロック(アメリカ)

(1912年1月28日 - 1956年8月11日)

今、様々な現代美術が生まれています。
しかし、絵画と言えば、具象的表現が主流の時代に、従来の誰にでも分りやすい絵画とは
全く違うアート芸術表現を始めました。

一般的に絵画という概念は、完成された「物あるいは物体」を指していますが、ポロックの場合は、
その行為そのものに意味があると感じたのです。
この作品はその思想がエネルギッシュなアクション行為の結果のみがとどめられています。

アメリカの近代絵画の日の出はポロックなしでは語ることができません。
ポロックの絵画は、現代都市からの疎外の表現であり、都市の繁栄の夢が破れた時代の
精神の自己回復の試みでした。

現代社会のありさまと重なる表現として改めて、ポロックの絵画を見つめ直すひと時を
持つのも良いかも知れません。